ロッククライミングを中心とするスポーツウェア、カジュアルウェアブランドの「GRAMICCI(グラミチ)」。そこまでファッションにのめり込んでなくても、その名前を一度は耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。
グラミチは今やファッションの定番ともいえる立ち位置まで定着したブランドだが、実は2022ssのシーズンより更なる躍進を遂げるため新たにクリエイティブディレクターが就任した。就任したのはStephan Wendler(ステファン・ウェンドラー)氏。これまでCarhartt WIP(カーハートWIP)やStussy(ステューシー)といったブランドでプロダクトディレクターとして手腕を振るった人物だ。
今回はそんな新しい一歩を踏み出すグラミチにフォーカスしていきたい。
そもそもGRAMICCIとは
まずグラミチとはどんなブランドか簡単にご紹介しよう。
ブランドの始まりは1970年代、アメリカで“ストーンマスター”と呼ばれ、アメリカ合衆国カリフォルニア州ヨセミテのロッククライミングをリードしてきた一人のロッククライマー、 マイク・グラハム氏が、当時のクライミングウェアでは満足できず、独自の手法で機能性に富んだウェアづくりに着手し、1982年、カリフォルニアの小さな倉庫でブランド、グラミチを立ち上げた。
特にヒットアイテムとして有名なものにグラミチパンツとグラミチショーツがある。これらのアイテムは180度自然な開脚を可能にしたガゼットクロッチ、片手で簡単に調節できるWebbingベルトといった独自性の高いギミックが特徴的だ。
現在ではクライミングパンツの代名詞的存在としてアメリカ中に広がり、日本でもクライミングシーンだけでなくファッションの定番として受け入れられている。
リスタートの第一歩
そんなグラミチと22ssからクリエイティブディレクターを担当するステファン氏の出会いは、ステファン氏がステューシーに務めていた時代、2020年にグラミチとステューシーがコラボしたときだそう。ステファン氏はこの時からグラミチというブランドのフィロソフィーやヒストリーをクールだと感じていたようだ。
では22ssのグラミチはどのような変化をしているのか。大きな変更点は2つあるようだ。
1つは、ステファン氏はグラミチの昔のカタログを見ると80年代や90年代のものがクールに感じたようで、そのルーツを大切にしているという。トレンドを追うのも悪いことではないがオリジナルを大切にされている。
もう1つは、ステファン氏が培ってきたストリートカルチャーやサブカルチャーをミックスすることだ。わかりやすい例としては、 90年代のステューシーのデザインには“Tongue in cheek”(英語で「からかう」や「冗談」という意味)というテイストが盛り込まれており、グラミチの22ssでもそのテイストを意識したグラフィックTシャツを展開している。また少し古着のような見え方もするガーメントダイ(製品染め)のTシャツも展開しており、その辺りも90年代の雰囲気を醸し出している。
22ssの特徴と展開アイテム
それでは22ssの展開アイテムにフォーカスしていく。
前述の通りステファン氏が目指したのは、80年代や90年代のブランドの原点に立ち返った、アウトドアとストリートの双方で活躍するアイテム。
ステファン氏曰く、オリジナルを大切にするという思いを特に込めたというGADGET PANT(ガジェットパンツ)とGRAMICCI PANT(グラミチパンツ)には要注目だ。
ガジェットパンツは1995年のカタログに記載されていたものを参考に制作。キャンバス地を使用した前身頃から後身頃にかけての大きなポケットが特徴で、程よいゆとりのあるシルエットだ。右身頃ポケット部分のブランドロゴ入りベルトディテールは、キーやボトルホルダーなど、アウトドアシーンからタウンシーンまで幅広く活躍してくれる。スケボーであったり街でも穿ける一方で、クライマー目線でつくった、アイコニックかつ現代のライフスタイルに合わせたパンツになっている。
長年愛され続ける定番中の定番パンツであるグラミチパンツは、ステファン氏から見ても成熟しきっていたようでシルエットなどは変更されていない。ただ素材にオーガニックコットンが使用されるようになった。ではなぜオーガニックコットンが使用されるようになったか。環境への意識が常識になっている現代で代表的なパンツにオーガニックコットンを使用することでインパクトを生むことを目的にしたようだ。たしかにオーガニックコットンを使った特別な商品を展開したり、一部マイナーモデルのみをオーガニックコットンにするというブランドなども多い中で思い切った試みだと思う。ちなみにグラミチパンツ以外にもオーガニックコットンを使用しており、一層環境への配慮も強化されている印象を受けた。
まとめ
ステファン氏は『ニューネス(新鮮さ)』をグラミチのディレクションをする上でテーマとされているが、あくまでグラミチのヒストリーを大切にしながら、彼自身の知見をミックスすることでオーセンティック且つニューネスなアイテムを増やしていくようだ。
22awシーズンからはさらにオリジナルの打ち出しを強化し、アーカイブアイテムの復刻なども検討中だそう。
また、ステファン氏は「ジーンズといえばリーバイスの501」のように、「パンツならグラミチ」と言われるようなブランドに育てたいと仰ってもいる。
一気に雰囲気を変えるのではなく、時代に合うよう軌道修正をしたともいえるステファン氏の率いるグラミチ。ブランドを理解した上で、尚且つリスペクトするからこそのクリエーションとも言えるだろう。どのように進んで行くのか今後の展開も楽しみだ。
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