近年のメンズのトレンドとしてもフレンチカジュアルが挙げられるほど、今フランスのファッションをルーツとするスタイルが流行している。
フレンチスタイルといえば、まずボーダーのバスクシャツをイメージする方も多いかと思うが、まさに昨年ごろにオーバーサイズのバスクシャツがSNS上でも話題となったブランド「OUTIL(ウティ)」をご存じだろうか。
今回は、フレンチヴィンテージをルーツとする「OUTIL」をご紹介する。
OUTILとは
ウティは、2016年にデザイナー宇多 悠也氏によってスタート。宇多氏は山口で育ち、上京して専門学校でファッションについて学んだ後、ファッションブランド企業に入社、現在は独立しブランドを展開されている。
ブランド名のOUTILは、フランス語で「道具」や「ツール」という意味がある。フランス製と日本製のアイテムを展開しており、拠点は日本においているが、伝統的なフランスの技法や染色方法などの技術を求めて現地を訪ね、作り手と直接コミュニケーションを通して、ほとんどのアイテムをメイドインフランスで制作している非常に珍しいブランドだ。
衣類を道具として捉え、ヨーロッパ、特に19世紀末から20世紀前半にかけてのフランスのワークやミリタリー、ユニフォームから着想を得て、パターンアレンジを加え、フランスの伝統的な服作りの素晴らしさを伝えている。次項でより詳しくその特徴を見ていこう。
OUTILの特徴
ウティは、フランスのワークウェアという手仕事でのモノづくりというカルチャーを踏襲しながら、都会の街に馴染む着心地と洗練されたデザインを兼ね備えた服を製作している。コンセプトも“人と人とを繋ぐため、生きるための衣服”としており、フランスの景色や人との出会いからインスピレーションを得ている。日々新しいブランドが増え続けている世の中だからこそ、経年変化、着用していく中でで魅力が増していくOUTILの服はライフスタイルの一部として手元に置いておきたいブランドの一つだ。
また生地、色へのこだわりが強く、例えば今ではかなり希少となった旧式の編機で製作するなど、当時のワークウェアの特徴を追求している。縫製もフランス海軍のユニフォームを縫っていた人たちに依頼しているようだ。イメージソースを元にものづくりをしているブランドはたくさんあるが、ここまでまさに本物といえるアイテムを作っているブランドはそう多くないだろう。以前はバスクシャツの生地もフランス海軍のデットストック生地を使用していたなど、芯まで忠実に再現するところはデザイナー宇多氏こだわりが感じられる。
前記の通り、ウティはフレンチヴィンテージに代表されるような素材を忠実に再現している。例えばモールスキン、ブラックインディゴリネン、ペッパー&ソルト生地(通称ゴマ塩)などが挙げられる。もちろん染色などの生地作りから縫製までほとんどがフランス製。このような素材へのこだわりは同ブランドのものづくりの根本となっている特徴だろう。
OUTILの定番アイテム
ウティは毎シーズン様々なアイテムを展開しているが、定番アイテムともいえるアイテムもある。ブランドを象徴するアイテムをいくつかご紹介しよう。
「TRICOT AAST」
こちらはカラー展開を変えて毎シーズン定番のアイテムの「TRICOT AAST」。ウティの顔と言っても良いだろう。
元々はフランス海軍で運用されていたヴィンテージのバスクシャツをベースにして、ウティらしく作られた当時の雰囲気漂う一着だ。一言にバスクシャツと言っても、実際にバスク地方で製作されるものは少ない中で、フランス、バスク地方で60年以上営んでいるカットソーメーカーで全ての生産工程を行っているという正真正銘のバスクシャツ。ロングスリーブだけでなくショートスリーブも展開されている。
「PANTALON CHASELLES」
ウティは、カーゴパンツもディティールや素材を変更し毎シーズン展開。
フランスの軍パンといえばM47が最も代表的だが、中でもM47の希少な前期モデルのディテールをベースにデザインされたモデル「PANTALON CHASELLES」。こちらは22SSで展開されたアイテムだ。
特徴としては1900-1930年代頃の生地を目指して製作された特殊な生地感。コットン×リネンの糸を可能な限り限界まで超高密度に織り上げられた生地で製作された後に染色が施されている製品染めとなっている。
「MANTEAU UZES」
ウティを代表するコートの一つ、MANTEAU UZES。こちらも基本的には毎シーズン、素材や色味は変えつつも定番展開されているアイテムだ。
デザイナー宇多氏がフランスの地方をまわりながら出会った、1930年代頃に描かれたであろうアンティークの絵画。そこに描かれていたのは後ろ姿の羊飼い。その羊飼いが羽織っていたコートの前部分は一体どういうデザインなのだろうかという所からこの形が生まれたのだそう。その着目はさすがの一言、ウティならではの名作といえる。
OUTIL まとめ
前述の通り、OUTILの服はフランスのワークウェアやミリタリーウェアをベースとしたものではあるが、日本人でも着用しやすいパターンを取り入れていたりと、現代社会で実際に服を着る人に寄り添っているのもウティの大きな特徴だ。
まさに懐古主義的な考えに囚われすぎることはなく、フランスの偉大な伝統を伝えるべく現代の日常着としての役割を果たしているブランドといえるだろう。
最近では大手セレクトショップのBEAMS(ビームス)やL’ECHOPPE(レショップ)、BLOOM&BRANCH(ブルーム&ブランチ)などでも取り扱いがあり、比較的実際に手に取って見やすいブランドにもなってきている。気になった方は是非一度ウティの世界観に触れてみてはいかがだろうか。