厳密に言うとメガネやサングラスは掛けるものだが、洋服を着るように纏いたくなるアイウェアを展開するブランドがある。そのブランドは、メガネ業界だけではなくファッション業界でも注目を集めるkearny(カーニー)だ。
ファッションアイコンとしても活躍する、人気アーティストKing Gnu(キングヌー)の常田大樹さんが着用していることでも話題になったkearny。
今回は、kearnyとはどのようなブランドなのか解説していきたいと思う。
kearnyとは
色に深みがあり、使い込むほど肌に馴染み熟成する生地として20世紀半ばまで主流だった、セルロイド製の眼鏡。量産に不向きな上、加工に手間が掛かる可燃性であることから、時の移ろいとともに技術の継承が途絶えつつある。この事実は、ファッションに関わる以上、危惧すべき事象と感じ、2013年に眼鏡ブランド<kearny>をスタート。
デザイナー・熊谷富士喜が、古着バイヤー時代に寝床としていたサンフランシスコ・カーニー通りにちなんだ、その名には“歴史と文化の交差”という意を込めた。眼鏡産業のいち時代を支えた職人技を後世に残したいという思いのもと、すべての眼鏡に用いたセルロイド製のパーツ。各年代を彩ったデザインに敬意を払い、自身が眼で見たもの、手で触れたものをプロダクトに溶け込ませる一意専心な物作りを探求する。
引用元:kearny
上記はkearny公式のブランド説明の引用だ。
デザイナーの熊谷富士喜さんは、眼鏡と服と音楽をこよなく愛されており、祐天寺は古着と雑貨などのセレクトアイテムを身近な観点から提案するショップとして、feets(フィート)、steef(スティーフ)という2つのショップの経営もされている。
そんなファッションにも精通しているデザイナーが手掛ける眼鏡ブランドがkearnyということだ。
そして引用にも記されているが、kearnyと切っても切れないのがセルロイドという素材だ。kearnyの眼鏡は、眼鏡産業のいち時代を支えた職人技を後世に残したいという強い思いから、全てこのセルロイドを用いて作られている。
セルロイドとは?
kearnyの眼鏡には、一般的に使われているアセテート素材ではなく、セルロイドが使われている。セルロイドは、アセテートとは成分の異なるプラスチック。昔は眼鏡以外にもよく使われていたが、原料不足やその扱いづらさからいつかなくなってしまうと噂されている。アセテートに比べると衝撃に強くコシがある反面、加工が難しく、眼鏡業界では職人がひとつひとつ磨くことが多い。その工程で中から含有物が出てくることもるようで、職人泣かせの生地とも言われている。
またkearnyのアイテムは、そのほとんどがメガネ製造日本一を誇る福井県鯖江市にて、職人によってハンドメイドで生産されている。
kearnyの眼鏡
kearnyの眼鏡は、アメリカのヴィンテージフレームをベースにたクセの少ないクラシックなモデルが多いが、扱いやすいバランスにリサイズされており、顔なじみも良く、現代のファッションシーンにも溶け込みやすくなっている。
ヴィンテージ眼鏡にインスピレーションを受けてはいるものの、そのまま作ると当時の人に戻るだけでコスプレになってしまう為、そこをどのようにズラしたらいまの時代に掛けやすくなるのかというのは常に考えられているようだ。欧米仕様のデザインを日本人の顔の幅や鼻の高さに合うよう調整するのはもちろん、眉幅をひろくする、ブリッジをあげるといった微調整は、ファッションの気分や時代感に連動させていらっしゃるようだ。洋服が好きな熊谷さんだからこそ提案できる眼鏡を提案されているのだろう。
kearnyでは様々なモデルを展開されているが、本記事では一部おすすめのモデルをご紹介しよう。
wellington
via:kearny
デザイナーの熊谷さんが一番最初にメガネに興味を持った形で、kearnyでのファーストコレクションにあたるモデルのwellington。型はアイウェアの中でもオーソドックスなデザインであるウェリントンタイプだ。アメリカンクラッシックのデザインを踏襲し、やや大ぶりなフレームは無骨なスタイルにも相性がよく、シンプルながら程よくエッジの効いたモデルだ。
round
via:kearny
roundは、一見すると丸眼鏡にも見える型だが、よく見ると完全な丸ではなく、眼鏡としてもサングラスとしても使用できる絶妙なサイズ感のモデルだ。kearnyのモデルは多くがそうですが、芯の入っていない透明感のあるテンプルはセルロイドでしかなしえない仕様になっている。
joseph
via:kearny
kearnyが初めて欧州に目を向けて製作したシーズンより展開しているモデルjoseph。40sから50sにフランスで人気のあったクラウンパントと呼ばれる型がベースになっている。気品があり、繊細かつモダンな佇まいが特徴的だ。ちなみにこのモデルはセルロイドの他にチタニウムという素材を用いて作られている。
mary
via:kearny
maryは、20世紀に生まれ定番となったフォックス型のサングラス。1950年ごろに映画内でマリリン・モンローがこのような形の眼鏡をかけたことからモンロー型と呼ばれることもあるそう。キツネのように目じりが上がったデザインのフレーム。レンズは小さめですがフレームが横に広くなっていることでクールなイメージを演出してくれる。
kearny まとめ
今年の6月には直営店として「sost.(ソスト) 」がオープンし、今後の展開にも期待したいkearny。
sost.は、熊谷氏も影響を受けたと語るフランスのとあるアイウェアショップをイメージソースに左官仕上げで作られ、モダンさが溢れるギャラリーのような佇まい。また面白いポイントとして、アイテムを特殊なショーケースに収納し、外からではどんなお店か想像がつかない作りになっているそう。現在は、ブランドのフルコレクションのほか、気鋭アーティストであるKANSAI NOGUCHIの陶器やウチダユウヤの木工作品の展示と販売をされている。
またsost.以外では、熊谷さんの経営するfeet(フィート)はもちろん、BEAUTY&YOUTHなどの大手セレクトショップまで取り扱いされている。
着る服や髪型に合わせてフレームの形を変えたり、レンズの色を変えてみたり。なぜかkearnyの眼鏡は特にアイウェアと呼ばれるのか腑に落ちるアイテムばかりだ。
夏に向けて一つは持っておきたいサングラス。その一候補にkearnyはいかがだろうか。