様々なセレクトショップに足を運ぶ洋服好きは多いと思うが、このブランド前の店でも見た、というようなことがよくあるのではないだろうか。特に近年は、どこのショップも置いているものが同じということを耳にすることが増えた。やはりショップとしても安定して売上を期待できる人気ブランドに頼りたくなるのだろうか。
そんな中、立ち上げ後間もなく人気を博し、今セレクトショップで圧倒的に見かける事が多い日本のブランドがある。それが2010年代にスタートしてドメスティックブランドの中で最も成功したと言われているブランド「AURALEE(オーラリー)」だ。
既にご存知の方も多いと思うが、今回は改めて「AURALEE」とはどんなブランドなのか、その魅力や、過去の名作などを少し詳しめにご紹介したい。
AURALEEとは
オーラリーは、2015年の春夏コレクションよりデザイナーである岩井良太氏がスタートした日本のファッションブランド。ブランド名の由来は、エルビス・プレスリーの名曲「Love Me Tender」の原曲の名前で、“光る土地”という意味だ。朝の光が似合うような洋服を作りたいというデザイナーの意思が込められている。シーズン毎のテーマは特に設けてはおらず、その時の気分を取り入れてデザインしている。
メンズ、ウィメンズともに展開しており、コンセプトは「素材を追求した上質で洗練された洋服」。そのコンセプト通り、素材作りをもデザインとして考えることで、自身が本当に良いと思える素材を追求している。
2015年の立ち上げ後、オーラリーは即座に人気を集め、多くのセレクトショップでも取り扱われるようになり、2017年には東京・南青山に初の直営店をオープン。その翌年にファッションプライズ「FASHION PRIZE OF TOKYO」を受賞したことをきっかけに、ブランドスタートから4年目にしてパリ・ファッション・ウイークでパリコレデビューを果たした。また同年に開催された第37回毎日ファッション大賞では、デザイナーの岩井氏が新人賞・資生堂奨励賞を受賞している。
AURALEEの原点
オーラリーの運営は、現在は株式会社オーラリーという名で独立したアパレルメーカーとして行っているが、デビュー当時はとある会社に属するブランドだった。
その会社は生地会社の「クリップクロップ」。オーラリーがブランドとして成功を収めた背景に大きく関わっている。
無名と言っていいほど一般的にはあまり知られていないが、規模は小さいながらも企画する生地のクオリティから業界では有名な生地会社だ。高級原料を用いた天然素材に定評があり、いわゆるキレイめな生地を得意としている。
まさに岩井氏の求めていた、“品があって、等身大で背伸びしない服”を作る為の土台になったといえる。
現在、オーラリーはクリップクロップからは離れたが、WELLDER(ウェルダー)やKAPTAIN SUNSHINE(キャプテンサンシャイン)などの人気ブランドを現在でも展開している。
AURALEEのデザイナー岩井良太氏について
デザイナーの岩井 良太氏は、1983年、兵庫県で生まれ、大学で経営を学んだのち上京、文化服装学院夜間部に入学する。当時はChristophe Lemaire(クリストフ ルメール)やSCYE(サイ)、kolor(カラー)等のブランドがお好きだったようだ。
モードがブームの時代だったが、岩井さんは奇抜なデザインより服そのものの素材や縫製に惹かれていたそう。スウェットやカットソーなどのベーシックなアイテムの素材が織りなす上品さ、魅力に取り憑かれていったようだ。
大学生の時に古着屋でアルバイトを始め、専門学校卒業後にカットソーやニットに定評のある「norikoike(ノリコイケ)」、綿や糸、編み方に至るまで自社開発することで有名な「FilMelange(フィルメランジェ)」にてデザイナーを務め、素材を意識をした物作りを学び、それが後にデビューするオーラリーの基盤となったようだ。
現在はDESCENTE(デサント)の展開する「DESCENTE PAUSE(デサント ポーズ)」のデザインも並行して担当している。
AURALEEの特徴
前述もしていますが、オーラリーは素材への拘り方が並みのそれではなく、洋服を作るのに素材自体をデザインするところから始まる。岩井さんの素材オタクぶりは業界でも有名で、原料の糸を選ぶところから織り方や編み方、加工まで、素材を作っている時間は妥協しない。
オーラリーの素材として使われているのは、世界中から厳選した原料を元に日本の工場で仕上げられる唯一無二の素材だ。例えばカシミヤやキャメルはモンゴル、ウールはオーストラリアやニュージーランドといったように実際に世界各地の産地を訪れ、原料を直接肌で感じ、現地の人と交流するところから始まるそう。
多くのアパレルは、生地会社から生地を仕入れて製品を製造する。中には素材に対してこだわりを持ち生地会社にオリジナルの生地を発注してから製品を造るというデザイナーもいる。ただオーラリーの岩井氏は糸から造る。これだけでも服作りへの情熱、職人魂みたいなものを感じるだろう。
オーラリーの展開するアイテムは、普遍的でシンプルなデザインのアイテムが多いが、こうした素材という部分の差別化によって、ブランドとしての世界観も作り上げられている。
デザイン面で言うと、リラックス感のあるシルエットや落ち着いた色味が特徴で、北欧のような柔らかく温かみのあるデザインだ。テイストとしては、少し前に大きなトレンドとなっていた「ノームコア」や「エフォートレス」のようなジャンルに属するようなイメージがある。
気取ることなく、毎日着る事に適した上質さを感じられる洋服を提案しているブランド、それがオーラリーだ。
また、オーラリーはシューズメーカーやセレクトショップなどコラボレーションの取り組みにも精力的で、デザイナーの豊富な人脈や人柄が伺える。特にNEW BALANCEやスタイリスト私物とのコラボレーションは特に人気で手に入れるのも至難の業になっている。
AURALEEの名品・定番アイテム
ここまではオーラリーの経歴や特徴についてご紹介した。
オーラリーでは毎シーズン様々なアイテムを展開しているが、定番的立ち位置にあるものや名作と言われるアイテムがある。ご紹介していこう。
STAND UP TEE
厚手でしっかりとしたハリのある生地のTシャツ。スタンドアップの名の通り、支えなしで自立できるほどタフだ。
シルエット、生地感などオーラリーならではのアイテムで、間違いなく名作とされるアイテムだろう。
SELVEDGE FADED LIGHT DENIM BLOUSON
こちらは22ssで展開されたアイテムだが、ここ最近のシーズン、デザインは変えつつも定番的にデニムジャケットとパンツを展開しており、特に人気も集めている印象だ。21ssのSUN FADE BLEACHのデニムも印象的で記憶に残っている。
WASHED FINX TWILL SHIRTS
コットンの中でも一握りの上質さを誇るフィンクスコットンを高密度に織り上げたツイル生地を使用した、オーラリー定番のシャツ。
シルクのような滑らかな肌触りが特徴で、言われなければコットンだとは思わないほどの生地感。この柔らかい風合いを出すために生地を何度も叩いては揉み洗いを繰り返しているそうで、その手間あって最高の着心地が実現するという。ロングスリーブだけでなく、夏仕様のショートスリーブも展開されている。
BABY CASHMERE KNIT P/O
オーラリーの冬といえばBABY CASHMERE KNITと言っても良いほど非常に人気のアイテム。
厳しい環境の外モンゴルで育ったカシミヤ山羊の中でも、生後6ヶ月までのカシミヤ山羊の毛のみを使用し、編み上げた極上な素材感のニット。世界でも限られた量しかなく、限られたメーカーしか使用出来ない希少で、この上ない素材を使用している。画像ではシンプルなニットに見えるが、実際に手に取ると確実に、加工では出せない原料そのものの柔らかさ、ぬめり感、光沢感を楽しめる1着だ。
LIGHT WOOL MAX GABARDINE JACKET
上質な極細繊維のスーパー140’sウールを使用し、限界まで高密度に織り上げたウールギャバジン生地を採用したLIGHT WOOL MAX GABARDINE JACKET。こちらも色や細かなディティールを変更しつつも継続的に展開されている。
ゆったりとしたシルエットと、ハリコシを最も強く出す加工と撥水加工を施しシワになりにくく、独特なハリ、コシと落ち感、程よい光沢感が特徴のアイテム。セットアップ着用ができるパンツも展開されている。
AURALEE まとめ
今回はオーラリーについて解説した。
他のドメスティックブランドと比較しても、とにかく人気で認知度も高く、デザインとしてはシンプルで合わせやすいアイテムが多い為、デザイナーズアパレルへのエントリーブランドとしても非常におすすめのブランドだ。
今では多くのセレクトショップが取扱いをしており、地方でも比較的実際に手に取って見やすくなっているため、まだ見たことや着たことがない方は是非一度オーラリーのこだわりに袖を通してみてほしい。